安全確保のチェックポイント
(ボランティア問題研究会編「子どもの冒険と安全」より)
事故発生のメカニズム
まず第一に、人間の行動、気質、心理状態と、第二に、服装、道具、設備などの状態、第三に、活動する周囲の環境。この三つの要因が、単独または相互に関連して欠陥エラーが重複したときに事故が発生する。とくに、大きな事故の前には潜在的な小事故やヒヤリ、ハッとしたエラーの積み重ねが存在するというのが通説であることを明記したい。
つぎに活動の場面での室内、野外を問わず、共通の基本的なチェックポイントを列挙してみる。
(1) 道具、服装、設備に関して
1:出来具合やその機能に欠陥はないか。
2:正しく作動するか、整備は十分か。
3:道具、設備などの正しい使い方や取り扱い法がなされているか。
4:使い方の不慣れや、技術の未熟はないか、ムリな使用法はしていないか。
5:落下、転倒などの危険はないか、正しい場所に置かれているか、整理、整頓はよいか。
6:服装は活動にふさわしいものか、正しく着用しているか、体の保護は十分か。
(2) 環境に関して
1 : 環境の不備や危険な箇所はないか。
2 : 危険な箇所の標示や立ち入らないような処置はできているか、全員への注意は徹底しているか。
3 : 活動する範囲の状態がよくわかっているか。
4 : 環境の事前調査はできているか。
5 : 人員と面積または空間のレイアウトの関係はよいか。
6 : 地震、火災などの災害発生時の心構えや心づもりはできているか。
(3) 人間の心理や行動に関して
1 : 興奮やうわきなど注意力が散漫な状態ではないか。
2 : 気のゆるみや不真面目な態度は見られないか。
3 : 疲労、イライラ、いやいや行動、淋しい、悲しい、悩みごとがある、ムカッ腹などマイナス状態はないか。
4 : 一点集中型や夢中になっていないか。
5 : 急ぐ、あわてる、せかされているといったことはないか。
6 : 平素と変わった行動をとる者がいないか。
7 : 多動児、早のみこみ、注意をよく聞かない、ボンヤリ型、ルールを守らないなど日常的に観察し、その傾向のある子どもにはとくに注意する。
8 : 平素はしっかりしていても、心やからだの状態によってはだれもがウッカリする可能性をもっているので、異変を早期に発見する。
9 : 健康状態は把握できているか。
(4) 人間には近道反応があることを知る
人間には潜在的に目的地や目的物、目的の行動に最小の労力で、最短距離や最短時間で到達しようとする欲求が働くことを「近道反応」と呼んでいる。道路の斜め横断、手すりを超えて行く、多少の障害物があろうと三角形の一辺を通ろうとするなど。距離だけでなく、行為そのものにもしばしば作用するもので、“横着をする”“手抜き行為”“途中を省略する”“決められた手順を省く”といった現象で現れるが、「近道反応」が出現する場合、かならず“自分だけは大丈夫”といった無意識の働きが作用する習性がだれにもあるということを知って、対策を立てておくことも重要なチェックポイントである。
ここでは実際に活動を展開するに当たって、それぞれの場面に応じたチェックポイントを検討してみる。
(1) 活動の計画時のチェックポイント
1 : 参加者の経験、年齢、性別、能力、集団の構成人員、指導者の人員と力量に合わせて考えられているか。
2 : 最小活動単位に、小グループの班別組織が取り入れられているか。
3 : 責任者や必要な役割分担が明確になっていて、情報の伝達や指導の体制はスムーズになっているか。現場の実地調査は充分か。
4 : 子どものなかにも指導者にも安全確保担当が決められているか、その人員は。
5 : 不測の事態が発生した場合の対策と体制、連絡方法が考えられているか。
(2) 実施時におけるチェックポイント
1 : 活動前、実施中、事後の人員点呼と行動の掌握は適切に行われているか。
2 : 活動直前に必要な注意事項は要領よく、なるべく具体的にわかりやすく指示されているか。不安全行動などの見本をやってみせて印象を深めるのも有効。
3 : 全員に注意事項が徹底できたか確認する。あまりよく聞いていなかったような子どもに応えさせて測定するとよい。
4 : 注意やルールを強調し、参加者も相互に注意し合い、守れるよう計られているか。
5 : 健康保持、衛生管理の配慮はされているか。
6 : 「いざという時」の行動の指示を与えておく。
7 : 単独行動を慎み、無断で集団を離れないように、必ず所在をはっきりさせる。
8 : 指導者や責任者の所在位置を知らせておく。
9 : 用具や施設の正しい取り扱い使用法の指導。
10 : 保護者との密接なコミュニケーションは計られているか。
11 : プログラムの運用に、ムリ、ムダ、ムラはないか、進行は参加者の状態に合わせて運営されているか、休息時間の配分はどうか。
12 : 人間関係の管理はよいか。
13 : 参加者の視点で見てみたか。
つぎに野外活動についてチェックポイントを見てゆこう。
(3) 野外活動のチェックポイント
行事のなかでも野外でのキャンプやハイキングは年間のハイライトである。しかし、すばらしい大自然の生活は日常生活とは違った条件であることを念頭におき、気象の変化など、予測しにくい状況も生起しうる。計画段階から安全の予備知識をもち、慎重にプランを立てなければならない。
1 : 各人の体力、性別、経験などを考慮し、無理のないプランを。
2 : 事前に野外活動の目的、参加要領、日程、服装、健康、持ち物などについて子どもと保護者ともに入念な打合せ会をもち、理解を得ること。
3 : 宿泊を伴うような場合には、事前に健康診断を受けさせる。
4 : 班長会はもとより、班ごとに参加に先立って注意すべき事項について話し合いを行い、ルールを守らせる。
5 : 係を分担させ、自主的に責任が果たせるように導くこと(安全係をおくとよい)。
6 : 指導者側の指導体制を確立し、一貫した指示、指導が伝わるようにする。
7 : キャンプ、サイクリング、登山などは経験豊かな指導者が同行する。
8 : 関係先への連絡(登山のコースによっては地元の警察、駅、山小屋などに計画と名簿を届け出る)、依頼はできたか。救急の場合のプランはできているか。
全国子ども会の資料によれば、年間を通じて小さなけがも含めての事故傾向として、
1 : 事故は7月がトップ、つづいて8月で、総体としては5月から8月までに年間の6割以上の発生を見ている。
2 : 年齢別では、5年生、6年生ともに2000件以上で、低学年の子どもの約3.5倍になる。
3 : 活動内容としては、スポーツ活動中が7.5割を占め、なかでもソフトボールが32.5%と群を抜き、ついでドッチボール9.9%、野球6.2%といった全行事中のワースト3である。
4 : けがの部位については、手指がナンバーワン、ついで腕や足と並んで顔面となっている。
5 : 特筆すべきことは、指導者、育成者の成人のけがが950件ほどもあり、事故報告全体の1割を占めている。子どもと大きく違って、足腰のけがが特徴、なかでもアキレス腱切断がトップ。死亡事故は11件と子どもより3名多く、原因は圧倒的に急性心不全、といったデータも有力なチェックポイントの参考になるであろう。
これだけのことは充分に手をつくしたという項目をあげよう。
1 : 発見者は、ただちに指導者(育成者)へ通報する。指導者はいかなる場合でも、あわてず、冷静沈着、すみやかに的確な方法で対応していくこと。
2 : 事故者を安静にし、事故の状況、傷の状態などを調べたり、意識の有無などをみて、適切な応急処置をとる。
3 : 他の子どもたちを遠ざけ、動揺、混乱しないように指導者がついて、2次災害の予防処置をする。
4 : 施設利用の場合は、管理者に対して事故災害の状況を連絡、説明する。
5 : 事故によっては、医師、消防署、警察署へ「いつ・どこで・だれが・どうしたか」報告し、「今しなければならないことは何か」指示を受ける。
6 : プログラムを続行するか、いちおう待機が、あるいは即刻中止かの判断をする。
7 : 代表責任者に正確な連絡をとり、事前に打ち合わせた救急体制に従い迅速に行動する。
8 : 事故によっては現場保存や現場写真の撮影、事情聴取、図面の作成、証拠の保全などが大切になる場合がある。
9 : 日頃から最低必要な救急法をマスターしておこう。救急箱を備えつけておくことを忘れないように。