穴窯とは
穴窯は世界の陶芸史のなかで比較的原始的な窯の形式で、日本では信楽などで中世までに進化した窯である。初期の穴窯はその文字通り、山の斜面に穴を掘り、土で天井を作り、その「穴」の中に作品を詰めて焼いたものであった。それまでの焼成方法「野焼き」に比べて、熱を逃さない構造になっていて、穴窯の登場は焼きものの歴史上画期的な展開であった。
その後、陶芸を焼く手段として窯は、登り窯→石炭窯→重油窯→ガス窯→電気窯へと、効率性を改良しながら進化し、それらに比べて効率の悪い穴窯は途絶えた時期もあった。
しかし、効率が悪いものの、穴窯でしか得られない効果が評価され、現代の陶芸作家の中に穴窯で作品を焼く人は多い。赤松が豊富にあり、良質な陶土が採れる滋賀県は、穴窯作家にとっては特に良い環境である。
穴窯の特徴は、作品に釉薬を施さないこと。薪(特に赤松)で4日間から1週間という長時間焚くことによって、作品の表面に燃えた薪の灰がのって、融けて、「自然釉」として作品を彩る。緋色という淡いオレンジ、ビイドロという濃いグリーン、焦げという荒々しいブラック、土の調合や窯の詰め方と焚き方によって様々な効果が得られる。
焼きものをやる人間は、一度穴窯を体験したら二つの派に分かれる:「こんなにしんどいことは二度と嫌!」という人と「こんなに面白いことはない!」という人。私はその後者だ。長時間にわたり、力仕事をしながらも、静かで透明感ある炎をみつめながら、仲間と一献を交わし人生を語り合い、窯と共に寝起きする・・・そこには奥の深い、神秘的な世界が潜んでいる。
子ども達に焼きもののこと、文化のこと、自然のこと、科学のこと、芸術のこと、歴史のこと、愛と笑いと平和のことを教えるツールとして、穴窯が果たせる役割は大きいと思う。